川北 稔(著)
A5判 380ページ 並製
定価 4,000円+税
ISBN978-4-7872-3555-8 C0036
書店発売予定日 2025年04月25日 登録日 2025年02月26日
ひきこもりの長期化や高年齢化が指摘され、親が高齢になり介護が必要になった段階で親と同居している無職や未婚の成人子の存在、特に子のひきこもりの問題が浮上した。8050問題である。
社会問題化してすでに20年以上たったひきこもりとは何か。それは大きくは社会的孤立に含まれる状態であり、年齢に固有の孤立(就職先とのミスマッチを経験する時期の若者や、退職後の高齢者など)、病気や障害による孤立、心理的な背景をもつ孤立(不安感や疎外感など)などがいくつも重なって表れることだ。
本書では、ひきこもり研究の第一人者が、「ひきこもりとは多様な社会的孤立の一側面である」として、生涯にわたる社会的孤立の解消をめざす施策を提起する。
民生委員の役割、生活困窮者窓口の支援、地域包括支援センターの対応、支援論の変遷、さらには政府の政策や法律を検証することを通して、孤立の多元的な理解と支援を提言する。表80点以上、図30点と、この20年の推移がわかるビジュアルな資料も充実。
【目次】
はじめに
序 章 生涯にわたる孤立の状況と「ひきこもり」概念の限界
1 8050問題の登場
2 社会的孤立と8050問題
3 8050問題につながるのは「ひきこもり」だけなのか
4 ライフコースを通じた社会的孤立の視点
5 若年層の「ひきこもり」理解にも刷新が必要
6 再び8050問題について――求められる新しい支援の形
7 本書の議論の見取り図
8 本書の構成
第1部 社会的孤立とひきこもりの概念
第1章 社会的孤立の概念
1 社会的孤立への注目
2 海外の孤立研究
3 孤独・孤立に関する支援の必要性と困難さ
4 ライフコースと孤立
5 海外の孤立に関する議論を受けて――「参加」の欠如と「交流」の欠如
6 日本の孤立問題
第2章 ひきこもり概念の意義と限界
1 「ひきこもり」概念のどこに問題があるのか
2 ひきこもりの「過剰拡張」と「見過ごし」
3 ライフコースの視点からみたひきこもり
4 狭義ひきこもり層内部の「見過ごし」
5 広義ひきこもりへの「過剰拡張」――無業者の辺縁化
6 自立をめぐる親子間の葛藤
7 「ひきこもり」の限定的な用法
補論1 社会的に孤立する人の支援エピソードの検討
補論2 既存の「ひきこもり」研究の限界――社会学的研究の自己反省の試み
第3章 海外の孤立研究は何を明らかにしてきたのか――子ども若者の対人不安と成人期への移行を中心に
1 ライフステージごとの孤独・孤立
2 子ども・若者の対人不安
3 若者の移行の危機
4 海外での子ども・若者の自立研究の小括
補論3 参加の欠如が対人交流に及ぼす影響について
第2部 統計調査にみる孤立とひきこもり
第4章 内閣府ひきこもり調査の検討
1 ひきこもり調査に含まれる課題
2 ひきこもりの操作的定義の課題
3 「女性のひきこもり」に関する議論の問題――2023年発表の調査を例に
4 ひきこもり調査から孤立のグレーゾーンを探る
第5章 社会的孤立に関する調査による外出限定層の検討
1 データと方法
2 結果
3 考察
4 結論
第6章 民生委員を対象とするひきこもり・社会的孤立調査
1 40歳以上のひきこもり事例への注目
2 都道府県による調査の概要
3 民生委員を対象とする「ひきこもり」調査
4 民生委員を対象とする社会的孤立支援事例の調査
第7章 生活困窮者窓口のひきこもり支援と「命の危険」
1 生活困窮者相談窓口のひきこもり対応
2 命の危険調査
3 死亡事例に関する実態
4 考察と課題
第8章 地域包括支援センターの8050事例への対応
1 地域包括支援センターのひきこもり事例への対応
2 地域包括支援センターの支援事例調査――自己放任(セルフ・ネグレクト)と依存
3 連携の課題
4 小括
第3部 多元的包摂への展望
第9章 支援における分断と全方位型のアセスメントの展開
1 生物・心理・社会アプローチ
2 全方位型アセスメント
3 小括
第10章 ひきこもりと孤立に関する支援論の変遷
1 ひきこもりに特化した支援論
2 生活困窮者自立支援や地域共生社会の観点からの支援論
第11章 生きづらさを抱える人の支援活動における「当事者」像の課題
1 集合的アイデンティティとアイデンティティ・ポリティクスの課題
2 『つながりの作法』の検討
3 「当事者研究」の限界
4 伴走型支援での多角的なつながりの構想
終 章 孤立の多元的な理解と支援
1 第1部のまとめ
2 第2部のまとめ
3 第3部のまとめ
参考文献一覧
おわりに
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