石井 達朗(著)
A5判 270ページ
定価 3,400円+税
ISBN978-4-7872-7473-1 C0076
書店発売予定日 2025年04月25日 登録日 2025年02月26日
高層ビル間にピンと張ったロープの上を、長く重いバランス棒だけを抱えて一歩一歩進む綱渡り師たち――。地上の観客が息を詰めて見上げるなか、空中で歩いたり、座ったり、寝転んだりを繰り返す。悲鳴をあげる観客。彼ら/彼女らはなぜ挑戦するのか。どのようにして墜落の恐怖を超えられるのか。
ナイアガラの滝の上を走る1本のワイヤー。綱を感じる足裏、皮膚が感じる湿気、微風をいち早く察知する。それはまるで身体を世界へと拡張させているかのようだ。SNSの時代には考えられない身体の極北がそこにある。
大の男だけではない。8歳の少年や15歳の少女、サーカス芸人の女性、何世代にもわたり延々と危険な技を続ける綱渡り一族。死をも恐れない老若男女が「より高く」「より長く」「より魅力的に」綱を渡る。「アクロバット」を「アート」に転換する現代の高所綱渡り師たちもいる。
生の実感、死の恐怖、生死の境界の究極のポエジーがそこにある。高所綱渡りに挑む勇者たちの、緊張感みなぎる生きざまを丹念に描く渾身のドキュメンタリー。
【目次】
第1章 女であることは途方もない可能性である
1 ロープ上で観客を魅了する幼女
2 代役がセンセーショナルな人気を博す
3 不倫の子を出産、そしてナポレオンと出会う
4 土砂降りのなかでロープを昇って、降りる――ロンドンっ子の驚きと称賛が止まらない
5 「マダム」と「マドモワゼル」、二人のサキが出現
6 満身創痍でも芸を続ける――壮絶なる晩年
第2章 ブロンディン――綱渡りの代名詞になった巨人
1 天才少年、波瀾万丈の日々
2 歴史に残る「ブロンディン」は二十七歳、アメリカで誕生した
3 ついにその日がやってきた――ナイアガラの滝に挑む
4 ナイアガラでの空前絶後の行為の数々
5 ダブリンで、作業スタッフの事故死を経験する
6 母国フランスに錦を飾れないのは、「重婚」が原因か
7 遠くオーストラリアでも衰えを知らない技を見せる
8 六十代半ばで久々のニューヨーク公演、そしてロンドンのついのすみかへ
第3章 「ブロンディン」を名乗り、ブロンディンに挑む
1 自他とも認める「オーストラリアのブロンディン」とは
2 少年を巻き込んだ二つの悲劇
3 「オーストラリアのブロンディン」を名乗る男の無鉄砲なパフォーマンス
4 ナイアガラで生まれ育った男のナイアガラ挑戦
第4章 体を張って、ジェンダーイメージをくつがえす女たち
1 サーカス芸人であることが、女が自由を手にできる数少ない領域だった
2 セリーナ・ヤング――最初の「女ブロンディン」
3 セリーナ・パーウェル、またの名をマダム・ジュヌヴィエーヴの痛ましい墜落死
4 ナイアガラを渡った歴史上ただ一人の女性
第5章 当代最高の綱渡り師・興行師だった男の数奇な行路
1 桁外れの情熱に突き動かされた人生
2 ブロンディンに真っ向勝負を挑む
3 「ストロングマン」の桁外れの身体能力
4 初めての公衆の面前で綱渡りを披露する
5 バランス棒なし、素手でワイヤーを歩く
6 ナイアガラ――運命の日がきた
7 よきパートナーに起こった悲劇
8 放浪、そしてふたたび挑戦への情熱にかき立てられる
9 綱渡り師から身を引いて、本格的な興行師になる
10 業界を震撼させるルルは、少年なのか少女なのか
11 アフリカの砂漠を縦断する大冒険、そして晩年
第6章 圧倒的な勇気と実力で時代を走り抜けたザゼル
1 天性の才能と特訓による無二のアンファン・テリーブル
2 ザゼル誕生前夜
3 十五歳の少女の常識を超えた芸はどんなものだったのか
4 天才少女にも事故は起きる
5 それでも、危険な人間大砲を続ける
6 大いなる転機――イギリスからアメリカへ、そして結婚
7 度重なる事故を生き延びる
8 伝説の女性を再起不能にした最後の事故
第7章 栄光と悲惨――綱渡り一族の壮大なる歴史
1 語り伝えられる墜落事故
2 伝説の綱渡り師カール・ワレンダの起源
3 サーカス団が馬車で移動していた時代
4 女性関係
5 ヘレン・クライス――願ってもない新星が現れる
6 先妻マーサと後妻ヘレン
7 四十年にわたり、大サーカス団専属の獣医をした男
8 夫と父の墜落死を乗り越えて生きた、頭領の娘ジェニー・ワレンダ
9 八十代でアクロバットを見せていたカーラ・ワレンダの華々しい生涯
10 最愛の弟の墜落死――どうして安全対策としてのネットを使わないのか
11 綱渡りのレジェンドの墜落死
12 落下死の本当の原因はどこにあるのか
13 ワレンダ一族存亡の危機――ニック・ワレンダはそれを救えるか
第8章 偉業か、狂気か――SNSの時代にあえて仕掛けるワレンダ一族の末裔
1 サーカスで生活する者たちの窮状
2 悪夢のような「七人のピラミッド」を復活する
3 さらなる限界に挑む――八人のピラミッドは可能か
4 まるで復讐であるかのような挑戦
5 ナイアガラ滝で、最も難度が高い挑戦をする
6 これはもはや「狂気」でしかないか――グランドキャニオンへの挑戦
7 ニックの存在を揺るがす大事故が起きた
8 奇跡的な復活
第9章 完全なる犯罪――創造する者はアウトローでなければならない
1 フィリップ・プティという生き方
2 私的サーカス体験――綱渡り以前
3 フィリップ・プティを知る
4 ポール・オースターが、パリでプティの大道芸を見ていた
5 映像と書物が世界貿易センターでの「行為」を解き明かす
6 ツインタワーに至る前に、ヨーロッパでやっていた数々の冒険
7 真っ青な空のもと、シドニーのベイ・ブリッジで……
8 徹夜で人知れずおこなう仕事は過酷である
9 「共犯者」がいなければ綱渡りはできない
10 突然現れ、すべてを見ていた謎の訪問者
11 決行のとき
12 ポール・オースターとの親交
13 「地上最大のショー」の巨大サーカス団で一年、仕事をする
14 その後のプティ――セント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂でのレジデンス、そしてパリに錦を飾る
15 危険は敵ではない
参考文献一覧
あとがき――いまなぜ綱渡りなのか
162-0801 東京都新宿区山吹町337
電話:03-3268-0381
ファクス:03-3268-0382
●会社案内 ●購入案内 ●プライバシーポリシー ●特定商取引法に基づく表示
●特約店一覧
●リンク
掲載している文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。それ以外のものと青弓社社員によるものの著作権は株式会社青弓社にあります。